•  No.12 街の姿

街はいろいろな姿をしています。 建物、道路、植栽など街を構成するさまざまな要素に調和があり、全体に整っている街を私たちは美しい街と考えています. 欧米の街に比べて現代の日本の街の乱雑振りがよく指摘されています. 江戸の頃までは美しい街並みがありました。
 
そこには「お上」の決めた「枠」があったからであり、長い歴史の中で培われた生き方の共通認識としての「枠」をわきまえながら、 その中での自由を楽しんで――農家や町屋、武家屋敷といった姿の中でいたわけです。
 
この第二次大戦後、その「枠」が取り払われ、意識の上でも自由になり何でもありになりました。 日本には世界に誇れる伝統文化があり、歌舞伎、能はその様式美を誇ります。
 
現代のインターナショナル建築はこの様式を破棄しました。 何でもありの世界では個々の姿はかなりな水準に達していても、全体としての調和に欠けます。
 
良い意味での「枠」が必要です。これは本来市民社会の中からコンセンサスのもとに生れてくるのが理想です。 どうも日本人はこれがあまり得意とは言えないようです。
 
しかし、今地方の都市で魅力ある街創りを目指して頑張っているところが結構あります。 古い遺産を再生して保存することも叫ばれています.この場合、使いながら保存をする事が大事な事のようですが、なかなか難しいことです。
 
調和ある街並みといえば、自然界から学ぶ事も多いと思います。例えば、四季を通じて銀杏並木はきれいです。 みんな同じように見えますが、よく見ると一本一本違います。一本一本に個性があります。 「素材と色彩が共通である」事を守りながら違っている。ここが大事なことだと思います。
 
雪景色一色の街は大方の人がきれいだと感じるはずです。しかし、それぞれの家の形や内容はちがうのです. 欧米の街中にもインターナショナルスタイルの建築を古い街並みの中に、建築家が試みている例がありますが、
 
必ずしも成功しているとは私には思えません。いま、行政の方や我々建築家が個と全体の調和を考え、 職能を通じてはたす役割は大きいといえましょう。
 
そして、将来を担う子供達に街の姿に又建築に、より多くの関心と興味を持ってもらうように私達がしむける必要があるのではないでしょうか。
 
 
岩田 穣