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No.11 「新すまい考」再発行にさいして
大変ご無沙汰致しました。すまい考は再出発します。
旧すまい考は平成5年まで発行していましたが、会の組織替えに伴い立ち消えとなっていました。
因みに、旧すまい考は1号~8号まで「祭事」「尺度」「玄関」「畳」「納戸、押入」「風呂あれこれ」「家相と方位」「台所、その変遷」をテーマにしていました。
「祭事」では建築をする土地は全て神様からの借り物であり、始めるに当たってのご挨拶である事、
「尺度」では、その始まりは紀元前に遡る歴史があり、その国柄によって生活に密着した様々な方法と知恵が隠されてい事、
「玄関」では個人の空間と都市空間の接点の役目をしている事、
「畳」では四季を通じて、この日本の気候にこれほど適した床材はないにもかかわらず「すまいの洋式化により使われなくなってきている事、
「納戸、押入」では座敷が寝室にも居間や食堂にもなるという千変万化の万能空間として機能する為の欠かせない装置が押入である事、
「風呂あれこれ」では日本の風呂の歴史をひも解きローマの共同浴場に負けぬ入浴(取り湯式)施設が鎌倉時代にあった事、
「家相と方位」では意外に家相が理にかなっている面もあるが、概して機能と相いれず建築家を悩ます種になっていること、
「台所、その変遷」では戦前までは場所が北側で比較的暗く恵まれない空間であつたものが、戦後になって洋式化が進み電化製品の発展と共に、明るく暖かい生活の中心になり、かまどの中央復権にもつながった事等々それぞれのテーマを歴史的、技術的解説、また生活風俗等の観点から、時にユーモアを交えて語ってまいりました。
建築関係の方々だけでなく、一般の方々にも読んで頂いておりました。
大変親しまれ「なかなか面白いね」「最近届かないけど、どうしたの?」と声を掛けられた事もありました。そういう方々に再び楽しんでもらえることを願っています。
従来の方針を大事にしながら、すまいにこだわらず、都市や街並みをも含めた広がりの中で、建築を中心にした生活環境に関わるテーマを見つけ、川建会々員一人ひとりの目を通して語って行きたいものと考えています。
岩田 穣