No.20 2008新年のご挨拶

 

建築と社会の関係

昨年末、景気の話題で上がったのがアメリカのサブプライムローンと改正建築基準法の施行による新築住宅着工件数の急減です。日米同時に建築を取り巻く社会が、景気に大きく影響を及ぼしたことになります。
 
日本では、国内総生産の1割が建築関連という中で、今回の建築確認による影響は、この国内総生産を大きく左右するほどの社会問題にまで発展したことになります。
 
この問題は、2年前の構造計画書偽装事件に端を...

 



No.19 信頼回復

 

一昨年の11月、国土交通省より構造計算書偽装のプレス発表がありました。 私たち設計事務所にとって、今までに経験したことのないとんでもない事件の始まりでした。 捜査の過程で様々な登場人物が出てくる中で、結局この事件は姉歯元建築士の構造計画書偽造によるものとなりましたが、 この事件をきっかけに多くの問題が議論されることになります。
 
先日の国会では、国交省より「社会資本整備審議会」への諸問により設けられた「社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会」により まとめられた「建築物の安全性確保のための建築行政のあり方について」の報告書に基...

 



No.18 伝統木造建築

 

川建会の研修旅行で、昨年11月23日~24日に宇治の平等院宝物館(鳳翔館)、平城宮跡第一次大極殿復原工事、 京都のはずれ加茂町の浄瑠璃寺の見学に行きました。
 
新設された平等院宝物館(栗生 明設計)が国宝の阿弥陀堂とどのような関係をもって建てられているのか、 重文の吉祥天女像の厨子が開帳され(10月1日~11月30日)、紅葉が見頃の浄瑠璃寺の伽藍配置にも興味がありましたが、 今回の研修旅行の主な目的は大極殿(だいごくでん)正殿の復原工事の見学でした。
 
平城宮では、すでに朱...

 



No.17 地震と建物

 

地震・雷・火事・親父と昔から言われていますが、この世の中一番怖いものは地震です。
 
昨年11月23日に発生した新潟中越大地震は10年前の兵庫県南部地震以来の震度7を記録しました。日本は地震大国で数々の地震画は発生しています。 ここで、地震の大きさを表すマグニチュード(M)は、地震のエネルギー規模を表す単位でマグニチュードが1大きくなると、エネルギーの大きさは約32倍になります。 関東大地震はM7.9、兵庫県南部地震はM7.2で、新潟中越地震はM6.8でした。
 
また、地震震...

 



No.16 アルミ建築

 

工業化されたアルミが初めて建築に使用されたのは、1900年初頭にオットー・ワグナー設計による郵便貯金局で、 玄関キャノピー、階段手摺、温風吹出し口等に使用されました。
 
アルミが工業化されたのが1886年なので、その10数年後に建築に用いられたことになります。 又さらにその10数年後には、あの有名なツェッぺリンの飛行船が建造され、その骨組みにアルミが使用されました。 飛行船は直径が30~40メートル、長さが200~300メートルという大きさで、 それを支える巨大なアルミ構造物が1910年代半ばに実現されていたことは、驚きに値しま...

 



No.15 空間と街

 

最近、住宅からマンションまで、「デザイナーズ」と呼ばれる空間を意識した作品が身近になりました。 造る側より、使う側の意識変革が大きな原因と思われますが、心地よい空間が増えることは良いことです。
 
空間とは3次元的な広がりで、間取図等の平面的な表現に、模型、スケッチ等の立体的表現を加えるとわかりやすくなりますが、 その形のほか、光のあたり方や、構成する材質や色調で変化します。
 
さらに、イメージをもう少し膨らませると、例えば、屋根や壁がなくても連続した鳥居が形成する求心力のあ...

 



No.14 街と屋根

 

「甍の波と雲の波…」と唄われたように、昔はきれいな屋並みが、そこここに見られたのでしょう。
 
二〇世妃に入り、近代建築がこの屋根に一大変化をもたらしました。欧米を中心とした建築運動の中に「陸屋根」 いわゆるフラットルーフが登場し、欧米を手本とする日本もこの波に飲まれて、戦後はもっばら「陸屋根」の花盛りでした。
 
公団住宅から学校建築まで、全て屋根は平らでなければ建築にあらずの状況でした。 そして、昭和年代までは屋上に林立するテレビアンテナ、物干し、高架水槽が当...

 



No.13 左官仕上

 

私達が設計で選択する仕上げ材料のひとつとして左官仕上がある。 おそらく左官工事の歴史は、人類の文明生活と共に始まったであろうと思われる。
 
左官材料は耐火性、断熱性、遮音性に優れ、工業製品ではほとんど期待できない湿度の自律調整機能にまで恵まれている。
 
土を単に水で練るだけでは、乾燥時にひび割れを起こすので、これを抑制するための材料が工夫をされてきた。 藁や紙、麻布等の繊維材料の?(すさ)と米や海草から作られた糊が使われ、 日本最古の建築の法隆寺金堂や五重塔(七世紀末から八...

 



No.12 街の姿

 

街はいろいろな姿をしています。 建物、道路、植栽など街を構成するさまざまな要素に調和があり、全体に整っている街を私たちは美しい街と考えています. 欧米の街に比べて現代の日本の街の乱雑振りがよく指摘されています. 江戸の頃までは美しい街並みがありました。
 
そこには「お上」の決めた「枠」があったからであり、長い歴史の中で培われた生き方の共通認識としての「枠」をわきまえながら、 その中での自由を楽しんで――農家や町屋、武家屋敷といった姿の中でいたわけです。
 
この第二次大戦後、...

 



No.11 「新すまい考」再発行にさいして

 

大変ご無沙汰致しました。すまい考は再出発します。
 
旧すまい考は平成5年まで発行していましたが、会の組織替えに伴い立ち消えとなっていました。
 
因みに、旧すまい考は1号~8号まで「祭事」「尺度」「玄関」「畳」「納戸、押入」「風呂あれこれ」「家相と方位」「台所、その変遷」をテーマにしていました。
 
「祭事」では建築をする土地は全て神様からの借り物であり、始めるに当たってのご挨拶である事、
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No.8 台所、その変遷

 

はるか昔、地球上に棲息する生物の中に、ヒョンな事から火をコントロールすることを憶えた種があった。
 
火を手にした彼等は、森の中や洞窟の中で、常に火を中心に置き、少しの燃料を大切に使い(主として薪であり地域によっては家畜の乾燥糞や動物の脂肪であつたが)氷河期の寒さをしのぎ、生の獲物を加熱、保存食として飢えに備え、闇にうごめく食肉獣から身を守りながら、飛躍的な進歩を遂げていった。
 
幾世代も経て住居が定着しても、火はその中心に置かれ火を育むカマドは、神の宿る場として崇められた。...

 



No.7 家相と方位

 

家相と言えばまず思い浮かぶのは鬼門、そして当るも八卦当らぬも八卦という占いの世界です。
 
今から二十年あまりも前の事ですが、世の中の大勢は既に迷信や因習が巾を利かせるような時代ではなかったのですが東工大教授で建築家の清家清博士が書いた「家相の科学」が話題を呼び当時ベストセラーになりました。
 
この本のサブタイトルに「建築学が発見したその真理」とあり、家相を単なる迷信として否定せずに古代からの経験的知識の累積として有用なものが多く含まれているという観点から科学的、建築学的に説...

 



No.6 風呂あれこれ

 

「ユイズル」を語源とし、縮まって「イヅ」となったと言われる伊豆の西側戸田(へだ)に先年やっと温泉が出て、船着場の奥の一部に町営の温泉がある。この戸田の港をかかえこむように延びている岬の先端に近く、T大の寮があり何本かの槙(まき)の大木に囲まれている。
 
この槙が桧を超えて珍重された浴槽の材料ということは意外と知られていない。風呂と言う言葉は元来蒸気風呂のことであり、瀬戸内海沿岸の石風呂や、洛北八瀬の釜風呂などである。
 
禊(みそぎ)のために入浴は宮中での神事としてのセレモ二...

 



No.5 納戸・押入

 

日本家屋においては一つの座敷が寝室にもなりダイニングルームにもなり、居間にも、ある時は応接間にもなる。こうしたライフスタイルは生活のあらゆる局面に応じて必要とされる道具立てをあたかもドラエモンのポケットの様に次々と繰り出して来る便利な押入無くしては成りたたない。
 
先進諸国の中で一番お粗末と言われている日本人の住まい。その質の指標のひとつが床面積だとすれば、その狭さを可能にさせているのが押入だということもできる。
 
妙な誉め方になってしまった上に更に言うのは押入に気の毒なの...

 



No.4 畳(タタミと女房は新しい方がよいか?)

 

数ある諺の中でこれほど誤解を受けやすいものはありません。奥様方の名誉と、私達の生活に深く係っている畳の為に一言いわせていただきます。
 
世の中の亭主共全てが、畳替の度に女房も取り替えたいなどという大それたものではなく、(少しはあるけど)女房は永遠に新しい畳の様に、初々しく、新鮮であってほしい!と願う、男の切ない望みを代弁したものです。
 
奥様方から白い眼で睨まれたのでは畳も亭主も気の毒というものです。第一(亭主はさておき)畳ほど保温、弾力、吸音性に優れ、湿度調整自由自在、汚...

 



No.3 玄関

 

日本の住いには、先ず入り口としての玄関がある。
 
本来は、来客用の出入口なのである。
 
何故「玄関」と云うのだろうか、この起源は鎌倉時代帰化僧栄西が、京都の建仁寺に、客殿への入り口としてこれを初めて試みたと伝えられている。
 
「玄関幽鍵感而遂通」と云う句があるが、玄妙の域に入る関門と云う意味であり、また「玄は又玄、幽妙の門」と云う句などから出た名称である。
 
室町...

 



No.2 尺度

 

物を測るにはモノサシが在り、物の長さ、大きさを知ることができる。
 
モノサシの歴史は古<、紀元前三千年の頃に石製の物差が使われていたとあり、お隣りの中国では紀元前二百年代に泰の始皇帝が度量衡(長さ・容積・重さの単位)を制定し、我が日本でも奈良時代に尺(曲尺)の標準器を諸国に頒布したとある。
 
今日使われている「メートル法」は江戸寛政の頃にフランスで作られた単位系で、日本では明治十九年にこの条約に加入して、同二十六年にメートル法を基とした度量衡を制定したが、これはメートル原器...

 



No.1 祭事

 

建築に関する祭事と云えば地鎮祭に始って上棟祭、竣工祭などが一般的だが、工事着工に際しほとんどの人が地鎮祭は行う。
 
地鎮祭、正しくは「とこしずめのまつり」と訓む。
 
何故こんなことを大真面目にするのだろうか。
 
起源は古く持続天皇の御代(西暦六九〇年)にはすでに祭の記録がある。
 
そもそも、建物を建てようとする土地が登記上自分の物であっても、元はと云えばこれ全部神...