スペシャル

新すまい考

左官仕上

 私達が設計で選択する仕上げ材料のひとつとして左官仕上がある。 おそらく左官工事の歴史は、人類の文明生活と共に始まったであろうと思われる。


 左官材料は耐火性、断熱性、遮音性に優れ、工業製品ではほとんど期待できない湿度の自律調整機能にまで恵まれている。


 土を単に水で練るだけでは、乾燥時にひび割れを起こすので、これを抑制するための材料が工夫をされてきた。 藁や紙、麻布等の繊維材料の?(すさ)と米や海草から作られた糊が使われ、 日本最古の建築の法隆寺金堂や五重塔(七世紀末から八世紀)の壁にもそれを見ることができる。


 伊豆の松崎市にある「伊豆の長八美術館」へ行くと、江戸時代から明治にかけて活躍した「伊豆の長八」と入江長八の漆喰による 鏝絵を見る事ができるが、その技術には感心をする。


 長八美術館も現代左官の技術、材料を色々と試しており、左官の事を勉強するにはよい教材である。


 川越や喜多方の蔵づくり、和風建築の壁や床、寺の漆喰塗りや建築塀、明治以降の洋風建築の漆喰による窓飾りや天井の装飾等、 日本の伝統左官技術は、木工事と共に世界に誇れる洗練された技術である。


 そのような左官工事が、スピードと画一的な仕上がりを要求する現在の建築生産の現場から敬遠され始めてからすでに久しい。


 左官工事は水を使う湿式工法によって施工され、その乾燥には時間がかかり、伝統的な下塗りから仕上げまで何層にも塗り重ねる方法は、 その都度乾燥を必要とし、工期を長く要することになる。


 左官工事に代わる石膏ボードを代表とする乾式工法の発展により、ますます衰退していく左官工事だったが、 最近やっとフォローの風が吹いてきた。


 アレルギーやシックハウスの問題が大きく取り上げられ、エコロジカルアーキテクチャー(環境共生建築) を考える時、珪藻土に代表される左官仕上が再評価され始めたのである。


 また、その工法も大きく変わり、砂に変わる混和剤の開発、石膏ボードの上に塗れる左官仕上、癒し系のテクスチャー等、 湿式工法の短所をカバーし、左官材料の長所を生かす材料や工法が開発され、私達の選択の幅が広がったのである。


奥山 繁樹

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